空き家と税金の話

本ページに記載の内容は、令和5年8月時点の情報に基づき、空き家に関する税金についての一部を要約したものです。税務に関するご相談や相続税の申告などは、必ず税理士等の専門家にご依頼ください。

固定資産税

土地や家屋を所有していますと毎年市区町村から1月1日時点の所有者に対して固定資産税及び都市計画税が課税されます(固定資産税1.4%都市計画税0.3%)。これは空き家に対しても課税されることとなりますが、土地の上に住宅がある場合には、その敷地は住宅用地の特例として大幅に税額が軽減されます。これは入居の有無に関係なく軽減の対象となるため、建物がそのままの状態の空き家が増加している原因の一つになっているとも言われています。

固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地
(200㎡までの部分)
評価額×1/6 評価額×1/3
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
評価額×1/3 評価額×2/3

住宅用地に対する特例

そこで国は一定の要件に該当する空き家については住宅用地の特例の適用を受けることができなくなる措置を行いました。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特措法)において特定空家と認定されると、住宅用地の特例の適用を受けることができません(地方税法第349条の3の2、法附則第17条の3)。なお、特定空家に認定されると直ちに適用が受けらなくなるわけではなく、以下のプロセスを経ることとなります。令和5年6月14日公布の『改正空家対策特措法』で新たに定められた『管理不全空家等』についても、同様のプロセスを経て固定資産税の住宅用地の特例が適用解除されることとなりました。詳しくは空家対策特措法 改正の影響をご覧ください。

①空き家の状態が行政によって調査される
②特定空家の条件に該当する場合、特定空家に指定される
③自治体から空き家の状態の改善を求める「助言・指導」をうける
④改善されない場合、空き家を修繕もしくは除去するように書面で「勧告」をうける
⑤改善されない場合、勧告後の翌年から特例の適用が受けられなくなる

結果、固定資産税及び都市計画税が高くなるため、何らかの対応を行っていく必要がでてくるものと考えます。

所得税(譲渡)

3000万円控除の特例

マイホームやその敷地を売却した場合には、譲渡所得の金額の計算上3000万円が控除されます。これは既に空き家になっている場合においても、その居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡した場合には適用できることとなっています。よって不動産の売却を検討している場合には、この期間中に売却されることをお勧めいたします。

また居住していたマイホームが空き家になった後に建物を解体した場合には、上記要件に加えて解体から1年以内に譲渡契約を締結すること及び駐車場等業務の用に供していないことが必要となりますのでご注意ください。

(注意)令和5年度税制改正により、被相続人居住用家屋及びその敷地等を令和6年1月1日以後に売却した場合において、その家屋及び敷地等の取得をした相続人が3人以上いる場合の特別控除額が2,000万円に制限されました。

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例

平成28年度税制改正により、空き家に係る譲渡所得の特別控除が創設されました。創設の目的は放置された空き家による周辺住民等への悪影響を防ぐ観点から、最大の要因である相続に由来する古い空き家の有効活用を促進するため、また空き家の発生を抑制するためです。

具体的には、相続開始の直前において被相続人のみが居住していた(1人暮らしだった)居住用財産を相続により取得した個人が、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に譲渡をした場合に、その譲渡に係る譲渡所得について、3,000万円特別控除の適用を受けることができることとなっています。また、相続開始の直前において被相続人が居住用財産に居住していなかった場合でも、介護保険法や老人福祉法等で定められている老人ホームに入居していた場合は3,000万円特別控除の適用を受けることが可能です。

令和5年度の税制改正により、特例の期間が4年間(令和6年1月1日~令和9年12月31日)延長されました。 

特別控除の特例の適用要件

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること。
  • マンション等の区分所有家屋でないこと。
  • 譲渡時において所定の耐震基準に適合していること(耐震改修をしていること)、または家屋を除却して土地のみを譲渡する場合であること。

    令和5年度の税制改正により、令和6年1月1日以降の譲渡については、売買契約等に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修工事、又は除却の工事を行った場合でも本特例が適用できることとなりました。但しこの場合、買主が期限までに要件を満たす工事を実施してくれるかどうか、十分な注意が必要です。

  • 相続開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡を行うこと。
  • 譲渡額が1億円以下であること。
  • 相続時から譲渡時まで事業の用、貸付けの用、居住の用に供されていたことがないこと(空き家であったこと)
  • 役所等から交付された、要件を満たす証明書などの書類を確定申告書に添付して申告すること。

※マンション等の区分所有家屋にはこの特別控除が適用されないため、親のマイホームを相続した相続人がその不動産を売却した場合は、相続人はそこに居住していなければ3000万円控除の特例の適用を受けることができません。しかし、その相続に伴い相続税が発生した場合には、当該売却不動産に課税された相続税相当額は譲渡所得の計算上取得費(不動産の購入金額)に加算をして計算することができます。いつ、誰が売却することが税務上有利なのか複数の選択肢があるため注意が必要です。

ただし、一団の土地の上に用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある場合は注意が必要です。この場合、控除の対象となる土地はその土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限られます。
つまり、控除の対象となる土地の面積は「土地の面積×母屋の床面積/(母屋の床面積+離れの床面積)」となります。

例えば、800㎡の土地の上に床面積が300㎡の母屋と200㎡の離れがある場合には800×300/(300+200)=480 で480㎡が控除の対象となります。

なお「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税額の取得費加算)」はこの特例との選択適用となります。

居住用財産の税率軽減の特例

上記の3000万円控除の対象となる居住用財産を譲渡したとき、その居住用財産の所有期間が10年を越えている場合には、3000万円控除に加えて、税率の軽減措置も適用されます。「3000万円控除の特例」と「軽減税率の特例」を重複して適用できるということです。

軽減税率の特例の適用要件

  • 譲渡した年の1月1日時点において、土地、建物ともに所有期間10年を超える居住用財産を譲渡していること。
  • 譲渡した年の前年、前々年において居住用財産の特例の適用を受けていないこと。
  • この譲渡について他の居住用財産の特例(上記の3,000万円控除の特例を除く)の適用を受けていないこと。
  • 譲渡する側とされる側の関係が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

軽減税率

課税長期譲渡所得金額 税額
6,000万円以下の部分 14%(所得税10%+住民税4%)
6,000万円超の部分 20%(所得税15%+住民税5%)

※平成25年から平成49年までの税額については、算出された所得税を課税標準として復興特別所得税2.1%分が加算されます。

空き家と相続税評価

平成27年から相続税の基礎控除・税率が改正されました。そのため、相続が発生した日(被相続人が死亡した日)によって、相続税の基礎控除や相続税率が異なるので注意が必要です。

相続税の基礎控除が縮小

平成26年12月31日以前の基礎控除 : 5000万円+1000万円×法定相続人の数
平成27年1月1日以降の基礎控除 : 3000万円+600万円×法定相続人の数

相続財産が基礎控除額を上回る場合は相続税が発生します。基礎控除額が大幅に引き下げられたため、従来であれば相続税の対象とならなかったケースでも対象となる可能性があります。特に地価の高い大都市圏などに一戸建(空き家含む)を所有している場合は注意が必要です。

相続税率アップ

相続税率の税率区分が6区分から8区分に変更され、最高税率が55%に引き上げられました。

相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 平成26年12月31日以前 平成27年1月1日以降
税率 控除額 税率 控除額
1千万円以下 10% 0 10% 0
1千万円超
3千万円以下
15% 50万円 15% 50万円
3千万円超
5千万円以下
20% 200万円 20% 200万円
5千万円超
1億円以下
30% 700万円 30% 700万円
1億円超
2億円以下
40% 1,700万円 40% 1,700万円
2億円超
3億円以下
45% 2,700万円
3億円超
6億円以下
50% 4,700万円 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の計算につき所有している不動産が空き家の場合には、下記の算式により計算されることになり、評価の計算上は特に軽減はありません。

土地 = 路線価 × 地積
建物 = 固定資産税評価額

空き家を賃貸として活用した場合には、入居者が入ることにより一定の制約を受けることから不動産の評価額は一定の軽減を受けることができます。

土地 = 路線価 × 地積 × ( 1 - 借地権割合 × 借家権割合(30%) )
家屋 = 固定資産税評価額 × ( 1 - 借家権割合(30%) )

(注)借地権割合については路線価図に記載があります。

また貸家にすることで、当該敷地は小規模宅地等の特例の対象地となります。

空き家と小規模宅地の特例

小規模宅地の課税の特例

一定の小規模な宅地を相続した場合には、その小規模宅地等とされる一定面積までの部分については、通常の相続税の課税価格の80%又は50%相当額を減額した金額を課税価格とすることができます。

用途別の減額割合と特例適用対象面積

項目 区分 対象面積 減額割合
居住用 特定居住用地等 330㎡ 80%
事業用 特定事業用地等 400㎡ 80%
特定同属会社事業用地等 400㎡ 80%
その他
(賃貸住宅敷地・駐車場等)
200㎡ 50%

上記の区分のうち、特定居住用宅地等については、下記の適用要件を満たしている必要があります。

区分 適用条件
取得者 取得者ごとの要件
被相続人の居住用 配偶者 要件なし(無条件)
同居親族
  • 申告期限まで、引き続きその家屋に居住していること
  • 申告期限までその宅地等を有していること
非同居親族
  • 配偶者及び同居法定相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は配偶者の所有する家屋(相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと
  • 申告期限までその宅地等を有していること
生計一親族の居住用 配偶者 要件なし(無条件)
生計一親族
  • 相続開始から申告期限までその宅地等の上に存する家屋に居住すること
  • 申告期限までその宅地等を有していること

親の居住の用に供されていた宅地であっても現在空き家となっている場合には原則として適用が不可ですが、平成26年の税制改正で一定の事由により空き家となったケースで一定の要件を満たす場合には親が居住していた土地として特定居住用宅地等の小規模宅地等の特例(土地の評価額のうち330㎡までは80%の減額)が適用できるようになりました。

老人ホームに入居した場合

平成26年1月1日以後の相続については、老人ホームへ入居したことにより相続時点で被相続人の居住の用に供されていない家屋については下記の要件を満たしていれば被相続人の居住用宅地等に該当することとなります。

  • 相続発生時点で要介護又は要支援の認定を受けている
  • 介護を目的として一定の施設に入居している
  • その家屋を貸し付けの用に供していない

なお上記の要件は被相続人の要件であることから、特例の適用を受けるためには別途相続人としての要件を充足する必要があります。現在空き家となっていることから同居者がいないということになりますので、その場合には相続人が次の要件を満たしている必要があります。

要件

  • 相続開始前3年以内に日本国内にある相続人自身又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと
  • 申告期限までその宅地等を有していること

空き家を賃貸とした場合

空き家を賃貸とし一定の要件を満たす場合には、「貸付事業用宅地等」に該当することとなり土地の評価額のうち200㎡まで50%の減額を受けることができます。ただしこの制度と先ほどの特定居住用等の特例については選択適用となるため、当該特例の適用が可能な土地が複数ある場合には、どの土地にどの制度を適用することが有利であるかを選択する必要があります。

本ページに記載の内容は、令和4年3月時点の情報に基づき、空き家に関する税金についての一部を要約したものです。税務に関するご相談や相続税の申告などは、必ず税理士等の専門家にご依頼ください。