空き家は所有するだけでも固定資産税をはじめとした、さまざまなコストがかかります。今回のコラムでは、空き家の維持管理にあたって発生するさまざまなコストについて紹介します。
空き家を所有すると発生する税金
空き家に限らず、不動産を所有すると税金が毎年かかります。所在地に関わらず発生する「固定資産税」と、市街化区域内の土地・建物に対して発生する「都市計画税」があります。どちらも、建物・土地のそれぞれに対して発生します。
固定資産税
固定資産税は、以下の計算式で求められます。
固定資産税額=固定資産評価額(課税標準額)×1.4%(税率)
税率は1.5%や1.6%と、自治体によって異なることがあります。
固定資産評価額とは、土地や建物の広さや立地、築年数などをもとに自治体が算出するものです。固定資産評価額は3年に1度見直し(評価替え)が行われます。固定資産評価額は、自治体が算出するものなので、不動産の売買価格や、不動産会社による査定価格などとは一致しません。
固定資産評価額は、自治体から届く納税通知書に記載されています。課税標準額は固定資産税評価額と通常は同じ金額となりますが、特例措置などが適用されると、固定資産評価額より低くなります。
固定資産税は、不動産が所在する自治体ごとに算出されます。1つの自治体の中で課税標準額の合計が土地については30万円、建物については20万円未満なら固定資産税は発生しません。土地と土地、建物と建物の課税標準額の合計で計算し、土地と建物の合計額ではないので注意してください。
例えば、課税標準額が25万円の土地と15万円の建物を同じ自治体内で所有していた場合は、土地・建物ともに固定資産税はかかりませんが、課税標準額が25万円の土地と15万円の土地を同じ自治体の中で所有していれば、合計で30万円を超えるので、固定資産税がかかります。
都市計画税
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業に必要な費用の一部を負担する目的で設けられている税金です。市街化区域内にある土地と建物に対して発生します。市街化区域に該当するかどうかは所在地の自治体に確認するのが確実です。
都市計画税の計算方法は以下の式の通りです。
固定資産評価額(課税標準額)×税率0.3%
例えば、固定資産評価額が1000万円の土地については、年間で3万円の都市計画税が発生します。
税率に関しては自治体によって変動しますが、0.3%が上限です。
都市計画税については、固定資産税と異なり、課税標準額がいくらまでは発生しないというものがありません。
固定資産税と都市計画税は同時に納めることになっており、納税通知書も1つにまとまって発行されます。納税通知書はその年の1月1日時点での所有者に対して、4~6月頃に送付されます。
空き家の維持管理に必要なコスト
空き家を維持するにあたっては、必要に応じたメンテナンスのためにさまざまなコストが必要になります。また管理を怠り、治安上や衛生上の問題が発生すると自治体から管理不全空き家・特定空き家に認定され、固定資産税や都市計画税の優遇措置が受けられなくなりますので、空き家を所有するなら、適切な管理が必要です。
ここからは空き家の維持管理に必要なコストを紹介します。
宿泊や物置とするなどの使用予定が全くない場合は電気の契約は不要です。しかし、水道は、完全に止めてしまうと水道管のサビや悪臭などの原因となります。適切な管理のためには、使用していなくても定期的な通水が必要ですので、水道の契約は維持しておくことをおすすめします。
参考として、東京電力の電気料金は、最もリーズナブルな10A契約で基本料金が311円75銭(税込)です。水道料金は上水道料金と下水道料金の合計で計算され、上水道料金にのみ基本料金が設けられています(東京都水道局で860円~)。一人暮らしの水道料金の平均が月額約2000円なので、定期的に通水する場合でも、同程度と見積もっておけば十分だと考えられます。
補修工事・枝木の剪定など
築年数が経ち、老朽化が進んだ空き家は、屋根や壁・窓などの修理や張り替えが必要になることがあります。
ここでは、それぞれの補修内容についての金額の目安を紹介します。
外装塗装の塗り直し
外壁塗装は見栄えのためだけに行うものではありません。外壁塗装は、文字通り外壁を塗装することで、外壁のひび割れや剥がれといった老朽化に伴う劣化の進行を遅らせることができます。また、紫外線や雨風から建物を守る効果もあります。
外壁塗装にかかる費用は塗装する面積や塗料などによって異なり、相場としては30坪で60~100万円、40坪で80~130万円、50坪で100~160万円、60坪で120~200万円ほどです。
屋根の張り替え
屋根の張り替えは葺き替え(ふきかえ)とも呼ばれる作業で、古い屋根材を撤去して新しい屋根材を取り付けることで、屋根全体を新品のものにすることをいいます。古い屋根材を撤去したあと、防水紙や野地板などの下地材も補修や交換なども行います。屋根の補修工事には、カバー工法といって既存の屋根材の上に、新しい屋根材被せる比較的費用がかからないものもありますが、既存の屋根材そのものが傷んでいる場合には実施できません。また、塗装によるメンテナンスも、劣化が激しい屋根の場合は塗料が密着しないため効果がありません。
屋根の張り替えは、屋根の寿命によって行うタイミングが異なります。スレート屋根の寿命は20~25年程度、金属屋根のガルバリウム鋼板では25~35年程度、瓦屋根の場合は50年以上とされています。
屋根の張り替えには、足場・養生費用、古い屋根材の撤去・処分費用、屋根の下地の補修費用、新しい屋根材の設置費用などが発生します。
工事費用の目安としては、現在の屋根材と新しく設置する屋根材によりますが、平均的な30坪の住宅で、同素材のものに張り替えるとするとスレート屋根なら100万~150万円、金属製のガルバリウム鋼板なら150万~200万円、瓦屋根なら200万~250万円となります。
割れた窓ガラスの交換
窓ガラスが割れていると雨や動物の侵入による損傷のリスクが高まります。また、防犯上の問題もあるので、割れた窓ガラスは早急に交換することをおすすめします。
窓ガラスの交換費用は、一般的なガラスか、防音・防火などの機能を備えたものかで変動があります。
一般的なガラスにもすり板ガラスや、網入りガラスなどの種類があります。目安としては、1枚当たりの交換費用は13,000~30,000円程度で、高機能なガラスの場合はそれ以上になります。
雑草処理
庭の草木が生い茂っていると、景観の問題だけでなく虫害のリスクがありますし、また人が出入りしていないことが外部からも分かるので不法投棄のターゲットにされるなどの恐れもあります。
雑草の処理方法には地面から生えている草を草刈り機で刈り取る方法と、手で草を根っこから抜く方法があります。手で草を抜く草むしりも、根っこが地面に残ることや風で雑草の種が運ばれてくることがあるため、定期的に行う必要があります。ただし、作業の回数としては草むしりの方が少なくて済みます。
費用の目安は、草刈りは1㎡あたり300~500円、草むしりは1㎡あたり3,000~9,000円程度です。草の長さで費用が変わる業者もあります。
庭木の剪定
庭木が伸びて隣家の敷地に達すると、迷惑がかかったり、ご近所トラブルの原因となったりします。伸びてしまった枝木は業者に依頼して剪定してもらうようにしましょう。費用は木1本あたりいくらという単価制の場合と1時間あたり、1日あたりいくらという日当制(時給制)のものの2パターンがあります。
費用目安としては、日当制なら職人1人1日当たり1.8万円~2.5万円が一般的な相場で、単価制なら0〜7m未満の庭木の剪定費用相場は2,500円〜3万円程度です。生け垣や植え込みの場合は、1㎡あたりの単価が決まっており、面積に応じて変動するパターンが一般的です。生け垣の剪定の場合は2,000円〜30,000円/㎡、植え込みの剪定なら1,000円〜4,000円/㎡が相場となります。
害虫駆除
空き家の維持には、ハチの巣やシロアリの被害を予防することも重要です。シロアリ対策としては予防と駆除の2つがあり、料金は駆除の方が高い傾向にあります。
料金相場としては、予防であれば1坪あたり約7,000円、駆除の場合は1坪あたり8,000円程度です。
また、ハチの巣の駆除はスズメバチの巣なら1つ約45,000円、アシナガバチやミツバチの巣なら約15,000円が相場で、別途必要に応じて高所作業費が発生することがあります。
解体費用
空き家の老朽化が進んでいる、活用予定がないなどの理由で取り壊す際には解体費用が発生します。
解体費用は作業車がスムーズに出入りできるかなどで料金が異なりますが、ひと坪あたり木造は3万~5万円、鉄骨造は4万~7万円、鉄筋コンクリート造は5万~8万円程度が相場です。
管理業者へ委託した場合の委託費
所有する空き家が自宅から遠く、自身で管理できない場合には、業者に管理を委託する方法があります。空き家の外で行える管理だけを委託するか、空き家の内部で換気や通水といった作業までを委託するかによって料金は異なります。委託費の相場としては月額3,000~12,000円程度です。
自身で管理をするとなると、遠方になるほど交通費はかかり、また到着までの時間もかかります。場合によっては宿泊が必要となることもあるでしょう。時間と費用、手間などの面から、管理を専門業者に委託することも検討してみることをおすすめします。
人が住んでいない空き家は傷むのが早いため、適切な維持管理が必要です。ぜひ今回のコラムを空き家管理にお役立てください。
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