
相続した実家が遠方で管理できない、長期出張などで家を空けるなどの理由で自宅や実家が空き家になってしまうことがあります。そのような際に、自身に代わって空き家の管理をしてくれる空き家管理サービスがあります。ひとくちに空き家管理サービスと言っても、その内容はさまざまです。今回のコラムでは、空き家の管理を業者に依頼する際の注意点を紹介します。
空き家に管理が必要な理由
空き家に人が住まず、適切な管理がされないとさまざまなトラブルの原因となります。
老朽化が早く進行する
人が住まない家は換気がなされず、湿気がたまりやすくなるため、家が傷むのが早くなります。また、長期間水道を使用しないと、水道管がサビて水漏れを起こすことや、悪臭や害虫が侵入する原因にもなります。家の状態を保つためには、目安として月に一度の換気、通水が必要です。
不法投棄や衛生面での問題が起きる
人が出入りしないことで、庭が不法投棄場所になってしまうことがあります。ゴミから悪臭が発生すると周辺の住民にも迷惑がかかります。また、ホームレスが侵入したり、犯罪者がたまり場にしたりする恐れもあります。
植木や雑草が生長して悪影響を及ぼす
庭の植木が伸び放題になり、隣の家の敷地に届くようになれば迷惑がかかります。また雑草が生い茂ることで害虫をひきよせ、家屋に浸入してしまうこともあります。
固定資産税の優遇が受けられなくなる
相続した空き家などで、今後使用する予定がないのに家屋を残している理由として、土地の固定資産税を計算する際の課税標準額が6分の1になる特例(200㎡を超える部分は3分の1)を適用するためというものが挙げられます。固定資産税は土地と建物それぞれにかかりますが、古い建物であれば価値が低く、建物部分にはほとんど固定資産税がかかりません。そのため、更地にするよりは、空き家を残しておいた方が固定資産税の総額が安くなる現状がありました。
しかし、現在では「倒壊の恐れがある」、「管理されていなくて景観を損なっている」「衛生上問題がある」「周辺環境のために放置しておくことが不適切」などの理由で自治体から「管理不全空き家」または「特定空き家」に指定され勧告措置が取られると、固定資産税の優遇が受けられなくなっています。つまり、税金面からも適切な空き家の管理が必要になってきているわけです。

管理できない空き家は業者に管理を依頼しよう
建物としての機能を保つため、周辺に悪影響を及ぼさないため、そして法律上(空家等対策に関する特別措置法)上も空き家を適切に管理する必要があります。空き家が遠方で年に1、2度しか訪問できないなどの場合には、空き家の管理を業者に依頼することを検討してください。
空き家管理業者を選ぶ際のポイント・注意点
管理が十分になされておらず、倒壊の危険性が高かったり、ごみ屋敷のような衛生上問題のある空き家を「特定空き家」に指定可能な「空き家対策特措法」が施行されて以来、空き家ビジネスに着目する企業や団体が空き家管理サービスを始めるケースが増えてきました。しかし、さまざまな業者が存在するため、どの業者を選ぶべきかを知識なく判断するのは困難です。
この項では、空き家管理業者を選ぶ際のポイントや注意点を紹介します。
空き家管理業務のノウハウと経験があるか
空き家管理サービスの提供には、空き家に関する専門的な知識や経験がある程度必要です。空き家の管理ノウハウや実績についてどの程度有しているか、例えば通水作業が必要な理由などを質問してみて、明確な回答ができないような業者への依頼は避けたほうがよいでしょう。
具体的な管理作業の説明や契約の説明(契約書の締結)がしっかりなされているか
管理作業の具体的な内容や費用、頻度、報告方法、契約期間、解約方法など、大切な空き家の管理を任せるわけですので、契約に関する説明が具体的であり、契約書がきちんと整備されているかなど、後々のトラブルを避けるためにも十分に確認しましょう。口頭での契約や簡単な申込書程度しか用意していない業者、また鍵の保管方法が不明確な業者などへの依頼は避けたほうが無難でしょう。
建物内部のチェックもしてもらえるか
空き家管理サービスには、大きく分けて屋外管理と室内管理の2つがあります。屋外管理では、庭木・雑草の確認や敷地内のゴミなどの収集、建物の状態確認をはじめ、郵便物がたまっていないか、玄関はきちんと施錠されているかなど、外から分かる異変がないかをチェックします。屋内管理では、建物の中に入り、換気や通水を含めた管理作業を行い、雨漏りやカビなどの発生はないか、害虫や害獣、侵入者の形跡がないかなどを確認します。空き家が傷まないようにするためには、屋内の管理作業が重要であることはこれまでお伝えした通りです。空き家管理業者を選ぶ際は、屋内の管理作業も行ってもらえるかどうかが1つのポイントとなります。
管理作業の報告方法と内容が十分か
空き家管理を業者に依頼する際には、どのようなかたちで報告してもらえるのかが非常に重要になります。文字だけの報告ではなく、実際に訪問した際の写真も添えて報告してもらえるのなら安心して任せられます。そして、可能ならば動画での報告がベストでしょう。写真では、特に異変がなかった場合は毎回同じようなものばかりになってしまいます。しかし、動画であれば本当に玄関の鍵が閉まっているか、ポストに郵便物はたまっていないかといった確認もしやすいですし、窓を開ける様子、水道から一定時間水を流す様子なども、作業開始から終了までがリアルに確認できます。訪問したくてもできない人も多い中で、疑似的にではあっても、その場にいるような気持ちにもなれますので、満足度は高くなるでしょう。
実際には管理作業を行っていないにもかかわらず、写真の使いまわしなどにより行ったふりをするような悪質な業者もいる可能性がありますので、報告方法や報告のタイミング、どのような形式と内容で報告が行われるのか、事前に十分確認しておくことが大切です。
売却や賃貸物件にすることの相談ができる
将来的に住む予定がある、改装してカフェや賃貸で貸し出すといった予定がなければ、使わない空き家をそのまま保有しておくメリットは薄いと言えるでしょう。固定資産税の優遇があるといっても一定の金額はかかりますし、空き家管理サービスの利用にも費用がかかります。そのため、使用する予定がないのなら、売却をするか一度更地にしてアパートを建てるなどの活用を検討すべきでしょう。空き家の管理を業者に依頼するのなら、管理だけでなく、売却や建て替えの相談もできる業者を選ぶことをおすすめします。
業者が直接管理作業をするかをチェック
空き家管理サービスを利用する上で重要なのは知名度ではなく、実際のサービス内容です。業者によっては企業規模を問わず管理作業を外注しているところがあります。管理作業が外注されるとトラブル発生時に自分に連絡が来るのが遅れたり、責任の所在があいまいになって対応の遅れが発生したりする可能性があります。責任をもって直接管理作業を行ってくれる業者がおすすめですが、外注の場合は、外注先業者の名前や連絡先、空き家管理業者と外注先事業者との契約内容、鍵の保管方法などを事前に必ず確認しておきましょう。
相続などによって空き家を所有することになる可能性は多くの人にあります。将来的に相続の予定があるのなら、建物をどのように活用するかをあらかじめ検討しておくことが重要です。今回のコラムが、空き家の管理や活用のヒントになれば幸いです。
参考:国土交通省 不動産業による空き家対策推進プログラムについて
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00066.html参考:国土交通省 不動産業者による空き家管理受託のガイドライン
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750008.pdf
本コラムの内容は公開・更新時点の情報に基づいて作成されたものです。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。