所有している空き家を売却したい、賃貸物件として貸し出したいときの選択肢の1つとして「空き家バンク」の活用があります。今回のコラムでは物件オーナー向けに空き家バンクの概要と活用の際のメリットや注意点などを紹介します。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、売却や貸し出しをしたい空き家の物件情報を地方公共団体のホームページ上で提供する仕組みのことです。空き家の所有者は各自治体に物件を登録する申請を行い、承認されると、それぞれの自治体のホームページに情報が掲載されます。
空き家へ入居希望の人は「〇〇市 空き家バンク」などと検索すると、登録されている空き家情報が確認できます。入居希望者も、自治体で利用申請を行います。
また、移住先などが決まっていない方向けに、全国版空き家バンクとしてat homeやLIFULL HOME‘Sが運営しているサイトもあります。自治体が独自で空き家バンクを運営しておらず、全国版にしか情報が掲載されていないこともあります。
参考:at home 空き家バンク
https://www.akiya-athome.jp/参考:LIFULL HOME`s 空き家バンク
https://www.homes.co.jp/akiyabank/
空き家バンク活用のメリット
空き家バンクは営利目的で運営されていないため、掲載料などの費用はかかりません。不動産としての価値の低さなどを理由に、不動産会社が仲介や買取をしてくれない物件でも掲載できる可能性がある点もメリットとして挙げられます。不動産会社が間に入らない場合は、入居希望者との直接交渉・契約となり、契約が成立しても仲介手数料が発生しません。
空き家バンク活用時の注意点
空き家バンクへの登録条件は自治体によって差があります。例えば、土地のみの売却は不可、賃貸物件は不可な場合、登録時に既に不動産会社と何らかの仲介契約を結んでいる場合は不可などのケースがあります。仲介契約については、専属専任媒介契約のみ不可など、自治体によってさまざまです。
また、自治体は情報を掲載する立場で、仲介をしているわけではありません。登録後の契約には自治体が紹介する不動産会社などに仲介に入ってもらう仕組みになっていることも多くありますが、そうでない場合は入居希望者との契約トラブルが起きやすい点や、売買契約に必要な書類を用意する手間がかかる点に注意が必要です。なお、空き家バンクであっても、不動産会社が仲介をし、入居希望者と契約を結ぶ際には、不動産会社へ仲介手数料の支払いが発生します。
参考:国土交通省空き家・空き地バンク総合情報ページ
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
空き家バンクを利用した方がよい物件・そうでない物件
空き家の売却や賃貸を検討している所有者にとって、空き家バンクへの登録は検討する価値があります。しかし、必ずしも空き家を所有しているからといって登録した方がよいわけではありません。
空き家バンクを利用した方がよい物件
空き家バンクの利用が向いている物件は、物件としての価値が低いものが該当します。
不動産会社は契約成立時の仲介手数料を収入源としているので、あまりに価格が低くなるものについては労力に見合わないとして、取り扱いをしてくれないことがあります。不動産会社に仲介契約を断られてしまい、物件情報サイトなどに掲載できない場合には空き家バンクの活用が有効です。
不動産の売却方法には仲介だけでなく、不動産会社に直接買い取ってもらう不動産買取という方法もあります。不動産買取は不動産会社が買取後にリフォームをして改めて一般市場に売りに出すため、建物部分の状態があまりよくなくても買い取ってもらいやすい点でメリットがあります。仲介で断られた場合は、買い取りも検討し、それでも断られた場合に空き家バンクを利用する流れがよいでしょう。
空き家バンクを利用しなくてよい物件
空き家バンクの利用がおすすめできない物件は、物件としての価値があり、買い手や借り手が見つかりやすい物件です。不動産会社が取り扱ってくれる物件であれば、その価値があると判断してよいでしょう。
入居希望者が早く見つかりやすくするために、不動産会社による仲介での売却・賃貸と並行して空き家バンクに登録する方法もあります。しかし、自治体によっては不動産会社との既存の契約があれば不可なこともあります。どちらかしか選べない場合に、不動産会社よりも空き家バンクを優先するメリットはありません。
なぜなら、空き家バンクは宣伝媒体ではないので、情報も最低限のものしか掲載されず、営業力には期待できないからです。自治体独自の空き家バンクはもちろんのこと、大手が運営している全国版空き家バンクであっても、一般の不動産情報に加えて空き家情報が掲載されているわけではなく、完全にサイトが分かれているので、宣伝効果は大きくありません。
さらには、空き家バンクを利用して物件を探すユーザーのニーズとも合致しません。空き家バンクは不動産会社から取り扱いを拒否された物件のような、価格の低いものが主に掲載されています。価格や賃料の低い物件を活用して大がかりなDIYをしたい人や田舎暮らしをしたい人向けの物件が多く掲載されているので、一般的な物件は多くありません。
空き家バンクを活用する際は、登録をする前に所有している物件の属性を考慮することが重要です。売却や賃貸を希望するのなら、まずは不動産会社に相談することをおすすめします。
本コラムの内容は公開・更新時点の情報に基づいて作成されたものです。最新の統計や法令等が反映されていない場合がありますのでご注意ください。