長期間人の出入りがなく放置されてしまった空き家は、室内に湿気や汚れがたまり、カビが生えやすい状態になっています。カビは、一度大繁殖してしまうと完全に除去することが難しく、悪臭の原因になるだけではなく、柱や壁をむしばみ、建物全体の老朽化を加速させてしまいます。
また、空気中に浮遊するカビ胞子による健康被害も懸念されているため、空き家の所有者は定期的に換気や掃除を行い、良好な衛生状態を維持していくことが大切です。
空き家にカビが生えやすくなるのは本当?
微生物の一種であるカビは、空気中1立方メートル当たり数個から数100個、多ければ数1,000個の胞子が浮遊していると言われます。カビの胞子は、空気中を漂う他の物質に付着し、適度な水分を吸うと芽を伸ばし、やがて目に見える形や色に変化していきます。
そのため、常に窓が締め切られ、空気の循環が悪く湿気やホコリがたまりやすい空き家は、カビにとって格好の温床となります。
老朽化が進んだ空き家では、わずかな雨漏りが原因でカビが大繁殖するケースも少なくありません。畳や柱付近など目に見える部分以外にも、クローゼットの中や床下、天井裏など目に見えない部分にカビが広がっている恐れがあります。
空き家に生えたカビを放置するとどうなる?
壁、床、柱などに根を下ろしたカビは、目に見える表面だけではなく、建材の奥深くまで入り込んでいきます。カビは、木材の腐食やシロアリ発生の温床となるため、そのまま放置しておくと、建物全体の耐久性に大きなダメージを与えかねないのです。
さらにカビの繁殖が進行すると、室内に悪臭が漂うようになります。この悪臭に含まれる大量のカビ胞子を吸い込んでしまうと、喘息、肺炎、皮膚炎、シックハウス症候群などの病気を発症するリスクが高まります。特に、体力があまり無く、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、妊産婦の方は注意が必要です。
空き家のカビ対策
湿度の高い梅雨の時期は、冬場の約5~6倍のスピードでカビが繁殖すると言われています。目安としては、湿度65%以上、室温20~25度以上となる時期に最も注意しなければなりません。ただし、それ以外の環境でもカビはゆっくりと活動を続けているため、年間を通じた対策が必須です。
空き家のカビ対策では、「定期的な換気」、「風通しの良い環境作り」、「掃除」が重要です。部屋の換気では、外から入った風が反対側の窓から抜けるように意識をします。玄関だけを開け放しても、室内で空気が循環するのみとなり効果がありません。
また、家財が散乱していたり、庭に背の高い雑草が生い茂っていたりすると、空気の流れが遮られ十分な換気が行われないので、風通しが良くなるように環境を整えておきましょう。
さらに、室内の掃除も欠かせません。カビは、砂やホコリを栄養源として成長するため、掃除機や雑巾を使ってこまめに汚れを除去しましょう。
空き家の管理では、定期的に換気を行って室内の空気を外気と循環させることが重要です。換気扇を設置して常時稼働させておくのも1つの方法ですが、湿度が高い時期には逆効果となるため、所有者が直接足を運んだ上で、空き家の状態を確認しなければなりません。もし定期的な管理がどうしても難しい場合は、空き家管理業者に依頼しておくと安心でしょう。