空き家の水道管に定期的に水を流す作業(通水)は、建物を良好な状態で維持していく上で大変重要です。できるだけ期間を空けず定期的に通水しておけば、水道管の破損や悪臭を未然に防ぐことができます。空き家は、人が住んでいるときに比べて圧倒的に劣化が早いため、換気や清掃などと合わせて1カ月に1回以上行うのが理想的です。
空き家の管理において「通水」が必要な理由とは?
長い期間水道管に水を通さないでいると、水道管が錆び付いて破損しやすくなってしまいます。しばらく通水していない水道から赤茶色の水が出てきたら、すでに錆が進行している可能性があります。水道管が破損すると、修理や交換に大変な費用がかかってしまうため、定期的な通水が欠かせません。
また、定期的に通水を行うことで、下水から発生する悪臭が屋内に充満するのを防ぐことができます。通常、水道管には「排水トラップ」と呼ばれる部分があり、ここに水が一定量溜まることで、下水管に蓋をする役割を果たしています。
ところが、家が空き家となって水道を利用しなくなると、排水トラップ内の水が蒸発して下水管の蓋がなくなってしまいます。すると、たちまち下水から悪臭が立ちのぼり、ネズミや害虫の進入経路となる可能性もあるのです。酷い場合には、近隣の住宅まで悪臭が達する恐れもあります。
通水は、所有者が適切な管理をしていることを示す上でも、欠かせない作業です。2015年5月から全面的に導入された「空き家対策の推進に関する特別措置法」では、所有者による適切な管理が行われず、建物の倒壊や衛生状態の悪化が懸念される空き家を「特定空家等」に指定し、行政が所有者に対し修繕の指導や勧告、命令、行政代執行ができるようになりました。特定空家等に指定されると、固定資産税が大幅に増税される措置がとられる可能性があるため、所有者にとっては大変な負担となってしまいます。
空き家の通水方法
空き家の水道管に水を通すために、まずは水道を使える状態にしておかなければなりません。もし契約が解除されている場合は、水道の使用開始(開栓)手続きをしておきましょう。
通水の頻度は、1カ月に1回以上が理想的です。台所や浴室、洗面所など屋内にある全ての蛇口で行うほか、庭や玄関にある水道も忘れずに通水します。蛇口をひねって、水が滞りなく出ているのを確認したら、そのまま最低1分以上は水を出しっぱなしにしておきます。通水することで、水道管内に付着した錆や汚れを洗い流し、排水トラップを水で満たします。
このとき、蛇口付近からの水漏れの有無も確認しておきます。ゴムパッキンの劣化や、蛇口の不具合が見られたら部品交換が必要です。また、特に冬場は水道管が凍結して設備が破損する恐れがあるため、給湯器などの水抜きも忘れずに行っておきましょう。
空き家の管理をせずに放置していると、大切な財産の価値を失ってしまうだけではなく、近隣の住宅に被害を及ぼしてしまう恐れもあるため、所有者が責任をもって管理していく必要があります。もし、遠方に住んでいるなど定期的な管理が難しい場合は、空き家管理業者に依頼しておくことをおすすめします。